敬老の日は祝日

会場には、昭和の名車が展示されていた。ステージにはひさしぶりの登場となる歌手が間もなく出てくる時だった。なにやら中央の席で若い夫婦が老婆に話しかけていた。

そこは、吹き抜けの大きなロビーの中にイスが100脚ぐらい置かれ、その周りを大勢の立ち見の客が取り巻いていた。最初はよくわからなかったが、老婆が席を立ってどこかに彷徨いながら行ってしまったことで理解できた。

ここのステージは、交代で歌手がミニライブを行うことになっている。そのたびに客は入れ替わる。若夫婦は前のステージは見ないで、その前から席を取っていたようだ。私も含め立っている人たちからざわめきが聞こえたが、懐かしい歌手の登場とともに一瞬で消えた。

今日の祝日は何・・・

もしかして、そう

近くに認知症の両親の面倒を見ている気のいい子がいた。

私より年下だけど、話を聞くとよく頑張っているなと頭が下がる。

先日も母親が昔の写真を引っ張り出してきて、この時、家族で行った花見は楽しかったと。

花はきれいでお弁当もおいしかった。今さっきのことは忘れても昔のことはよく覚えているもんだねと言ったそうだ。

父親もしばらく写真を眺めてから、ここのいちご大福はうまかったと。

でも写真を見ても、行ったことがないんだよねと私に話しかけてきた。

・・・・・

先を走っていた。

東京に行ってきました

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千葉にいるとすぐ東京に行ける。

これは、ありがたいことだ。

レインボーブリッジは、何度見てもいいし、またそこから眺める夜景はとくに素晴らしい。

東京駅もそうだ。何がいいって、東京駅の造りもそうだが、そこに佇むことができるのがなんともいえない。

なにか、なつかしさ或いはノスタルジーも感じさせてくれる。

でもなぜ、そう感じてしまうのかとも思う。

それにノスタルジーはポジティブなことばではないが、なつかしさはすこし違うような気がする。

 

お裾分け

なぜか、自然に笑ってしまう。よかった、ほんとうによかった。みんな元気なんだ。心の底から笑っている、笑みがこぼれている。待ち合わせた駅では、お互いしばらく探しあっていた。病み上がりとは違って血色がよくなって、わからなかったのである。
友人と紅葉を見に行った話やファッションや最近買ったズボンのサイズが大きくなったなどの話をしていると、この人なんで入院してたんだっけとわからなくなってしまう。
私は、これまで医者にかかったことがなかったのだが、突然の病で大手術をして今は難病患者となってしまった。入院中はいろいろ心配なことばかりだったが、退院してまったくの健康ではないが元気になった。
大声を上げて隣で笑っている婆さんたちは、入院中も退院しても回りに元気をくれ続けている。本人も直りがたい病気の持ち主であるのだが。
私もこの喜びと感謝をだれかに分けていきたい。

楽しくなる入院の仕方

ある初夏の病院で―

私は、気分転換のためふらふらと病棟のラウンジに行ってみた。

目もうつろにぼーと腰かけていると一人の老婆が声をかけてくれた「元気かね」。

私は入院しているのに元気なわけがないと思い、老婆の方を見た。入院同期というか同じ日に入院した待合室で机に臥せっていた砂かけ婆のような頭をしたあの人だった。えーっこの人と一緒かと心の中で思っていた。

とっさに「えーまー」と答えてしまった。なんでそう言ってしまったのか、とりあえずビールと同じだ。

翌日も寝ていると余計具合が悪くなるので、検査後またラウンジに行くとなんと「婆さんず」になっていた。一瞬どうしようと思ったが「あんた今日はどう」の声が早かった。

仕方なく同席することになった。しかし、話の中身が凄い。夜中に見回りに来る看護士が顔にライトを立てた時におかめのお面をかぶろうというのだ、とんでもないことをよくも考えるわ。夜中に看護士の悲鳴で起き上がれない人も跳ね起きてしまうと言ったら、あんたもセンスがいいねえとー。

そして結局のところ私はのっぺらぼうのお面になった。お面は見舞いに来る人に頼み、明日決行となった。

私は生まれてから病気という病気をしたことがなく、最近は専ら元気に老人クラブ活動にいそしんでいた。

ところが、ちょっと医者にかかったことから大変なことが分かり、緊急入院となり、来る日も来る日も検査に疲れ果てて、他の臓器も悪くなり、つらい日々を送ることとなった。何しろベッドに寝ているだけで具合が悪くなるのだから最悪である。

婆さんが言っていた「人生めぐり合わせだよ、そん中でいいこと考えんだ。」

毎日こんな調子で体調も良くなり、あっという間に3人ともめでたく退院の日を迎え、紅葉の時期になったらまた会おうと約束して、厳しい夏空の街に戻っていった。

 

 

 

実際にあったあぶない話

久しぶりの海外旅行で、南アフリカの草原を大型の車で走った。名前はわからないがたくさんの種類の動物たちがいる。ほとんどが草食だが、中には肉食もいるので注意をしてくださいとのガイドのおにいさんの話だった。日本の動物園では、角が切ってあるが、本物はすごい迫力だ。

夕食は、早めに市内の食堂で何かわからないようなものを食べた。どうやら郷土料理?らしい。

ホテルに戻ったが、時間が早すぎて寝る気にはならなかったのでガイドのおにいさんに車のキーを借りて街を一回りすることにした。くれぐれも町を出ないようにとくどくどと言われた。だけど小さな町なのであっという間に草原に出ていた。あたりは漆黒の闇に包まれていた。ベッドライトをつけていても、2~3メートル先しか見えないような気がする。とにかくUターンして帰ることにしたその時、ガクッと激しく揺れた。脱輪だ。

ため息をついて、気が付いた。まわりに光るものがうごめいているのを、同時にウーという低いうなり声。その声がだんだん大きくなってきた、狼だと思った。車の後方に一目散に逃げた。走るに走った、街の明かりが少し見えてきた、が間に合わない、もうだめだ、その時とっさに頭に浮かんだのは、足が速いと急には曲がれない動物がいることをどこかの本で読んだ。

曲がった、がついてきた。頭に強い衝撃が走る。暗黒の世界である・・・・・

目を開けると孫たちが枕もとで掃除機をうならせていた。

どうやら、あまり起きないので掃除機の先でつついていたようだ。

「どうしたのビッショリだよ」の声に、今思いっきり走ってきたからだよと答えて、洗面所に向かった。背中に視線を感じた、嫁もいた。

しまった、「夢の中で」を言い忘れた。定期健診だと言って大きな病院に連れて行かれるのを速めてしまった。